日刊工業新聞 2000.7.12

国立大学教官と新会社

日本LSIカード社長らが来月設立

ITS関連特許を実業化

車の全周囲動画像を撮影できる全周センサーを用いて、高度道路交通システム(ITS)関連のシステムを開発する産学連携の新会社が8月に発足する。全周センサーを発明、基本特許を保有する石黒浩和歌山大学助教授が役員として参画し開発のスピードアップを図る。新会社には3法人と日本LSIカードの大木信二社長ら個人2人が出資。2001年から本格的に活動に入り3年後をめどに株式公開を目指す。大学特許の技術移転から一歩踏み込んだ新タイプの産学連携として注目を集めそうだ。

全周センサーは360度周囲を撮る機器で親指より少し大きい。車のバックミラー周辺やダッシュボードの上などに設置する。このセンサーからの画像を電荷結合素子(CCD)カメラで受け、ソフトウエアで応用する研究開発を進める。新会社に出資する大木社長は「特許だけでは商品化は難しい。先生自身が知的財産ななおで、開発に参画してもらうのがもっとも望ましい形」と経緯を説明する。

新会社の事業計画では、例えば車の周囲360度の動画を撮り、事故前数十秒から事故直前までの動画像記録を残す航空機のブラックボックスのような技術の開発を計画している。これにより機械的なトラブルや人為的なミスといった事故原因の解明に役立ち、事故後の保険をはじめとする後処理がスムーズにできる可能性もある。

ITSの周辺技術としては事故が起こった時には自動的に位置と状況を情報センターに通報し、状況に応じて警察、消防に救助を依頼するといったシステムの開発も進んでいる。これに車の全周動画像が加われば事故の救助活動も効果的に行うことができる。装置自体は数万円程度に抑えることを目標にしている。


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