日本経済産業新聞 2002.3.4  

投資家注目のVB

この技術カメラ1台で鮮明に水平方向の風景を360度にわたって撮影する全方位撮影システム。複数のカメラの利用や、カメラを回転させながら撮影する方法が一般的だが、高度な画像処理技術必要だったり、コスト高になるのが難点だった。撮影機器開発のヴイストン(大阪市、大和信夫社長)は一台のカメラで全方位を同時に撮影できるシステムを開発した。

 システムは小型の電荷結合素子(CCD)カメラと円筒形な透明なガラスケース、凸面鏡で構成する。ガラスケース内部の天井に凸面鏡を備え付ける。底部にはCCDカメラがあり、天井に向いたレンズが凸面鏡に映った全方位の画像を撮影する。

この仕組み自体は新しいわけではないが、ヴイストンは凸面鏡の中心部に針状の金属を真下に向けて設置した。円筒形のガラスケース内で乱反射した光は必ず中心部を通過するため、針状の金属を設置することで、画像のぼやけなどの要因となる乱反射光を遮断する。

針部分は真下のカメラから見ると点として認識されるが、パノラマ状の画像を作製する時点で切り取ってしまうので画像には影響を及ぼさない。「乱反射の問題を解決できたことで実用化の向けて大きく前進した」(大和社長)

凸面鏡に映った円形の画像をカメラが撮影し、カメラと接続したパソコンが録画・再生する。専用ソフトで一部を拡大することもできる。

システムは和歌山大学システム工学部の石黒浩教授が開発。ヴイストンは石黒教授の技術の実用化を目指し、ICカード開発の日本LSIカードの大木信二前社長らが出資し2000年8月に設立。大和社長は起業を志している際に知り合った大木氏の勧めでヴイストンの社長に就いた。石黒教授もヴイストンの取締役だ。

前方位の撮影方法としては、4-6台のカメラを放射状に設置して個々のカメラが撮影した画像をパソコンでつなぎあわせたり、1台のカメラを回転させながら撮影するやり方もある。ただ、複数のカメラで撮影した画像のつなぎ合わせには高度な画像処理技術が必要。カメラ回転の場合は大掛かりな駆動装置が欠かせないため、製造や維持管理のコストが割高になる。

新システムは低コストで製造できる利点を生かし、価格を16万8千円と複数のカメラを使ったシステムにした場合に比べて「半分以下の水準」(大和社長)に抑えたという。12日に、主に遠隔監視用システムとして発売する。撮影した画像をインターネットで送信できる機能を備えたカメラを組み込んだ。店舗の防犯対策としての需要が見込めるほか、遠隔地同士で会議するためのシステムとして企業に販売する。初年度300セットの販売を目指す。

 ヴイストンの2002年9月期の単独売上高は前期比約5倍の1億5千万円前後に達する見通し。全方位撮影システムを利用した防犯システムや遠隔地会議システムの販売が始まることが売上増に寄与する。前期まで赤字だった経営損益も今期は黒字転換する公算が大きい。

自動車の運転状況を全方位撮影システムで自動的に記録し、交通事故が発生した際に原因を突き止めるのに役立てることも考えている。将来は自動車メーカーにオプション機器として採用するように呼びかけていく。株式上場の目標時期は定めてないが、大和社長は「できるだけ早く上場したい」と話している。 (藤井 良憲)


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