日本経済新聞

平成15516

次世代ロボのVB続々

2足歩行軸に

会話機能も搭載

近畿で人間型など次世代ロボットを開発するベンチャー企業が相次いでいる。

大企業をスピンアウトした技術者による企業や、大学発ベンチャーの参加が目立つ。近畿には産業用を中心にロボットを製造する大企業
や先端的な研究所が集積し自治体や経済団体も育成に力を入れていることから、今後も同分野進の動きが加速しそうだ。

神戸市のベンチャー企業「はじめ研究所」は寝た状態から磁力で起き上がれる二足歩行の人間型ロボットを開発、このほど同分野参入を
目指す市内の機械部品メーカーに納入した。同社の坂本元社長は川崎重工業で制御関係のソフトを開発していた、技術者で、3年前に退社、
昨年12月に会社を設立した。今後も開発した製品はロボットを研究する企業などに販売する考え。近く他のベンチャー企業と共同で会話
能力を備えたロボットの開発にも着手、年内に試作機を完成させる計画だ。

三菱重工業出身の井辺智吉社長が設立したベンチャー企業、ピノキオ(神戸市)はアミューズメントロボットの開発に取り組む。昨夏から
遠隔操作の人間型ロボットの開発に本格的に着手、イベント用に貸し出す事業を開始した。井辺社長は三菱重工で原発用検査ロボットなどの
開発をした経験があり、今後は外壁清掃・補修や福祉用のロボット開発にも乗り出す。

国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能映像通信研究所の社長だった中津良平氏が設立したニルバーナテクノロジー(京都府精華町)は、
科学館などの案内用ロボットの頭脳部分を開発。子供と会話できるソフトを作成、
ATRが開発したロボット「ロボビー」に搭載して3月、
宇都宮市の子供総合科学館に販売した。中津社長は
ATRでロボット開発に携わったが、研究にメドがついたのを機に独立、研究成果の事業家
に乗り出した。

大学発

研究実用化へ

大学発ベンチャーも誕生している。京都大学工学部を3月に卒業した高橋智隆氏は京大内インキュベーション施設で事業所「ロボガレージ」
を立ち上げた。足の裏に電磁石を付け、鉄製の床の上でバランスよく歩く2足歩行のロボットを開発。将来は在宅介護警備用ロボット開発を
目指す。高橋氏の技術には松下電器産業が着目、4月から新型ロボット共同開発を始めた。

ロボビー開発に主導的役割を果たした石黒浩・大阪大学教授が発明した技術の実用化を目指し設立されたヴイストン(大阪市、大和信夫社長)
も2足歩行の小型ロボットを開発した。

開発したのは石黒教授の教え子で、ATRでロボビーの開発に携わっていた同社の前田武志取締役。同氏は石黒教授が同社の取締役に就任した縁で
ヘッドハンティングされた。

ロボットの全長はホンダが開発した「アシモ」の4分の1の約30センチ。「パソコン1台分」の価格で年内にも研究者向けに発売する。


基盤産業充実の近畿

近畿経済産業局が最近出した報告書によると、人間型など次世代ロボットの市場規模は2002年度の見込みで65億円。だが、今後急速に市場が拡大
するとの見方もあり、
2010年度には焼く1千三百億円に達するとみられている。

近畿には川崎重工、三菱重工など産業用ロボットを手掛ける企業の生産拠点に加え、精密金型、プラスチック加工、金属加工などの中小企業が集積。
また
ATRのような世界的に評価の高い研究所もある。ベンチャー企業が相次いで誕生しているのは、次世代ロボット産業が育つ土壌が関西にあるから
だと言える。関西の中心を担うのは大企業だが、「市場のニーズを的確に把握するには小回りが利くベンチャーの方が有利」(近畿経済産業局)との
指摘もある。大企業とベンチャーが開発で連携する、ケースも増えると予想され、次世代ロボットの市場形成過程でベンチャーが大きな役割を担うと
期待されている。


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